曽我部さんの技術研修

我々は「花と緑という媒体で人の気持ちをお届けします」という理念を掲げている。

 

我々の提供するサービスを通じて少しでも日本の感情が豊かになればいい、と考えている。

そのため単に花束やアレンジを「期日通りお届けしました」、では仕事が完結するわけではない。届けた商品に対して届けられた先の方々が感嘆符をもらすようなものでなければならないと感じる。このように話すことと現実にはやはりギャップがあり、そのためにギフトを作成するメンバーの技術研鑽には会社として取り組まなければならない。

ある市場の担当者に「誰か人間性に優れていて素晴らしい作品を創る方、でうちの技術研修を引き受けてくれる方、いないかね?」と相談したところ「一人若いけどいい人がいますよ」と言って紹介してくれた。その方は確かに若いが親が北海道で花屋を営まれ、都内にある花屋の2代目が通う花の専門学校を卒業後、有名花店に勤務、数々のコンクールで優勝、フランスのある展覧会で日本人代表として出ているデザイナー。なんだか肩書きだけ見ていると少し堅苦しいな、というのが印象だった。市場の担当者の性格から推測して、人間性にきっと優れているんだと思い込んだ。実際会ってみると非常に礼儀正しく気さくな印象。「花って咲いている場所から摘み取った瞬間から人工物になって自然のものとは違うんですよ。で、人の手を加えた以上徹底的に人の手を加えてもっともその花が綺麗に見られるようにしないといけないと思うんですよね」と彼が言った瞬間、「この人にお願いしよう」と即座に、半ば押し付けるように研修をお願いした。それが約2年前。月2回、彼のハードなスケジュールの合間を縫って研修をやってくれている。社内では「曽我部研修」という技術者向けの研修になっている。内容はその時のそれぞれが直面している課題や商品に対して、実際の花を使いながら作品を創っていく。ロジックから実践までを丁寧に教えてくれている。私自身、何度も隅の席で参加させてもらい、花束を教えてもらった。「花束のスパイラルを組んでいると指先の感覚でここのが足りない、というのがわかりますよ!」「全くわかりません…。」このあたりから私の参加率は低下していく。

 

やはり商品を作ることは納期が限られ時間が制約される中においては、ややもすると作業になってしまい、本来我々が掲げているヴィジョンを無視して仕事として進めてしまう場合がある。これはこれで仕方のない時もあるが、ビジョンや理想を失うと仕事は誠に無機質なものに色あせてしまい、取り組んだ自分の時間は仕事ではなく作業をした時間になって有意義とは少し離れた時間になってしまう時がある。彼が研修を行うようになってくれて「花に関わることって素晴らしいですね。面白いです」というメンバーが増えた。

「シンプルにうまくなりたいです」という新人さんもいた。その感想を通じて「花を届けることって、いい仕事だな」と改めて感じる。11月も2回やってくれる。

 

明記し忘れそうになったが、その若手デザイナーは曽我部翔さんでROCK`NROSEというアトリエを営んでいる。http://syosogabe.com/

苗字からすると北海道出身だが、ご先祖さんは四国の方なんだろうな。